かれこれ十年以上もずっと好きで、応援しつづけているロックバンドがあります。バンド自体のコンサートも何度か行きましたが、そのバンドのボーカルはソロ活動もしていて、単独でのコンサートを開くこともあります。以前、そのボーカルがギター一本で弾き語りコンサートを開催するということで、夫婦で行きました。場所も車で二時間くらいの場所だったので、気合を入れてチケットを買ったおぼえがあります。ちなみにうちの夫は、そのバンドの曲をよく知らないので、半ば私が無理やりに連れて行った形です。そのコンサートは面白い趣旨で、なるべく普段のツアーでは回らないような場所で開催するということでした。
歌をより身近に感じられて、ファンにとってもうれしいコンサートです。私たちが参加した会場は、酒造りの蔵に隣接していて、ちょっとしたステージ会場、というような感じのところでした。コンサートが始まるまでは、一般開放されている造酒の様子を見学したり、おみやげに日本酒を買ったりと、楽しいひとときを過ごしました。そして開場時間が来たので、並べられたパイプ椅子に座ると、あることに気づきました。ステージの横に、そでにあたる部分が見当たらないのです。ギターやマイクが既に設置されている壇上へ行くには、観客が座っているパイプ椅子の間を通るしかなさそうで、しかもその通路はとても狭いのです。
固唾を飲んで、歌手の登場を待ちました。予想通り後ろの方から現れ、手を伸ばせそうな触れそうな距離をゆっくりと歩んでいきます。あこがれの歌手を、こんなに間近に見たのは初めてです。歓声をあげながら身体に触っている観客もいましたが、私には恐れ多すぎて、拍手をするだけで精一杯でした。後にも先にも、あんなに近くに歌手を感じられるコンサートはないことでしょう。